私の読書日記45

2018年5月9日 水曜日

盤上の向日葵

 柚月裕子

20180509 今、将棋界では藤井六段の話題で持ち切りですね。ここ1~2年の内に将棋界の八つの大きなタイトルの内一つは取るでしょうし、20歳になる前に名人位の獲得も充分可能性があります。私も将棋は好きで、全く指しませんが棋界の情報は以前から追い続けています。このブログでも、2度将棋関連の本を紹介しました(2016.11.30「聖の青春」2017.9.21「将棋の子」)。

上記2冊は若い棋士の生き様を描いたノンフィクションでしたが、今回紹介する本は舞台こそ将棋界ですがフィクション、ミステリー小説です。ですので、将棋に詳しくない人でも充分楽しめる本だと思います。

(あらすじ1)
 埼玉県天城山山中で白骨死体が発見された。死後3年は経過しているとみられ、身元判明には時間がかかりそうだった。ただ、いかにも不自然な遺留品があった。将棋の駒が遺体に添えられていたのだ。しかもその駒は、江戸末期から明治にかけて活躍した有名な駒師初代菊水月作という名駒で、時価にして600万円とも言われていて、同種の駒は7品しかつくられていない。

なぜ、死体にそのような高価な駒が添えられているのかは謎だが、身元が分からない状況で、捜査の手掛かりはこの駒しかない。大宮北署のベテラン刑事石破と、数年前までプロ棋士を志していた若い刑事佐野は、この駒の持ち主を特定すべく、7つの駒の現在を追って全国へ飛ぶ。

(あらすじ2)
 一方で全く別のストーリーが同時に進行する。長野県諏訪湖周辺の町に住む上条桂介少年は母を幼い時に亡くし、酒浸りの父親から虐待を受けていた。桂介の唯一の救いは将棋の本を読むこと。廃品として捨てられた雑誌の中から将棋雑誌を盗み出し秘かに読んでいた。それを知った近所に住む元教師の唐沢は、盗みを叱るのではなく桂介に将棋を教えることにした。桂介の腕はみるみる上達した。桂介の将棋の才能を見込んだ唐沢は、プロを目指せと促し奨励会(将棋のプロ養成機関)に入れようとするが、父親の猛反対に遭い断念する。

成長した桂介は東大に入学するが、ふらりと寄った街の将棋クラブで真剣師(賭け将棋をする人物)金明に出会う。桂介は金明を毛嫌いするが、彼の指す将棋にはなぜか惹かれていく。

(感想)
 かなり分厚い本ですが、ミステリー仕立てになっており、どんどん惹き込まれていきます。それだけでなく、桂介が受けた父親からの虐待と、唐沢から受けた愛情でそこから立ち直っていく様は、感動的で読者を泣かせます。ミステリーでありながら、一人の人間の成長物語として成立しているこの小説は、松本清張の「砂の器」を思い出させます。

2018年本屋大賞2位もうなずけます。

(M.T@総務部)