私の読書日記44

2018年4月3日 火曜日

ギリシヤ人の物語Ⅲ 新しき力

 塩野七生

 201804031皆さんは「世界の三大英雄は誰か」と問われたら誰と答えますか?秦の始皇帝、アレクサンドロス大王、ハンニバル、ユリウス・カエサル、チンギス・ハーン、ナポレオンなどが候補に挙がると思いますが、どのように三人を選ぶにしても、絶対に外せないのがアレクサンドロス大王(英語読みアレキサンダー、ペルシャではイスカンダルと呼ばれた)だと私は思います(←意見には個人差があります(笑))。

征服した国や土地の数・広さ、時代背景、その後の世界への影響力等を考えると、断然NO1ではないでしょうか(ちなみにその基準からいくと、あと二人はカエサルとチンギス・ハーンになりそうです)。

ギリシャ人の物語Ⅲは、そのマケドニア王アレクサンドロスが主人公です。ギリシャの都市国家凋落後、ギリシャの北方から勃興し、あっと言う間にギリシャ世界を制覇。東方へ遠征し当時世界最強の大国ペルシャを倒し、インドまで足を伸ばした青年王の物語はどんなフィクションよりもスリリングで壮大な冒険譚です。

(あらすじ)

 アレクサンドロスは紀元前336年、マケドニア王フィリッポスの子として生まれる。家庭教師のアリストテレスから幅広い教養を学び、スパルタ人から文字通りスパルタ式の軍事教練を受け逞しい武人へと成長。父王がギリシャ世界をほぼ制覇した後、何者かの暗殺で倒れたため、20歳の若さで王位に就く。

王位就任の翌年、ギリシャ世界最大の脅威であった大国ペルシャを倒すため、マケドニア及びギリシャ諸都市の兵で3万5千人の軍を編成し東方へ遠征(現在の中東~中央アジア)する。ペルシャへ侵入後、大きな戦いは4度。最も有名なイッソスの戦いではペルシャ軍は15万とも20万とも言われるなど、全ての戦いで自軍の数倍の戦力ある相手を粉砕し敗走させる。連戦連勝しただけでなく、自軍の損害が極めて少なかったことも特徴である。

 これは彼が戦いの都度、戦略、戦術を明確にし、それを全軍に徹底することで、軍全体が彼の指示のもと一糸乱れぬ戦いをしていたからである。彼は単なる王ではなく、軍略家として戦術の立案に極めて優れていた。それだけでなく、戦場にあっては一般の兵士と同じ食を取り、同じ場所で寝起きをし、戦闘が始まれば常に真っ先に敵陣に突っ込んで行き、一兵士としても極めて有能であった。これらのことで兵士からは絶大な信頼と尊敬を集めていた。このような一体感が、マケドニア軍の強さだった。

 彼が残した事跡で特筆すべきはマケドニア人とペルシャ人の融和を進めたこと。例えば、征服した土地の統治を部下のマケドニア人が行うのではなく、行政に関してはペルシャ人にそのまま任せたことである。マケドニアの兵士とペルシャ人との結婚も奨励し、自らもペルシャ王の娘と結婚式を挙げている。各地に新しい都市を建設し、〇〇地方のアレクサンドリアと名付けられた。これらの都市は現在でも存続しているところもある。このような融和政策とインフラ整備によりギリシャ文化とオリエント文化が融合し、後にヘレニズム文化と呼ばれる科学芸術の絶頂期を迎えることになる。

201804032(感想)

 本の感想はともかく、塩野氏がこの作品を最後にもう新たな歴史物語は書かないと、あと書きで述べていることがショックです。

 1992年に発表された「ローマ人の物語第1巻」以降、ずっと氏の作品を愛読してきた者としては寂しい限りです。もう80歳とのことなので止むを得ないことかも知れませんが、残念です。カエサルやアレクサンドロスのように、氏の創作意欲を掻き立てる魅力的な人物がもういないということなのでしょうか。

(M.T@総務部)