カテゴリー別アーカイブ: 私の読書日記

私の読書日記32

2016年7月28日 木曜日

陸 王

 池井戸潤

s20160728池井戸潤の作品をこのブログで紹介するのは4度目になります。もちろん一番多いのですが、私が好きな作家だからと言うより、今、日本で一番人気のある作家でヒット作が多いが故だと思います。

さて、今回の主人公は足袋屋の社長です。足袋と言えば、今は和装にしか使われませんが、以前は建築業界の職人さん方にとって地下足袋は必需品でしたし、子供の運動会では運動足袋が主流でした。私も子供の時は履いて走ったものです。

しかしながら、近年需要は大きく減少し、足袋を作るメーカーもどんどん廃業。足袋一筋100年を超える家業を続けてきた「こはぜ屋」の四代目社長、宮沢もそのような現状と将来を憂い、この先どうして行こうか悩んでいます。

<あらすじ>

 会社の将来のため、何か新事業を立ち上げねば、と考えていた宮沢は運動靴の製作に自社の足袋の技術を活かせないかと思いつく。スポーツインストラクターに相談したり、実業団の陸上競技チームを紹介してもらったりして、研究開発がスタート。

技術的な面では、倒産したベンチャー企業が死蔵していた特許技術を活用できたりして、これまでにはないソフトで軽くかつ耐久性が高く、怪我をしにくい靴「陸王」を開発。世に出そうとするが、既存の大手スポーツ用品メーカーのアトランティスに悉く妨害され、販売はスムーズに進まない。しかし、その情熱に感銘を受けた、某実業団陸上部の茂木が陸王を履いて競技に出ることを決意。元日の「ニューイヤー駅伝」で快走し、これが陸王のデビュー戦となった。

上々のスタートを切った「陸王」だったが、その前にはとんでもない事件が次々と起こり、運動靴事業からの撤退を決断しなければならない危機が到来する。

<感想>

 さすが池井戸潤!とうなりたくなる展開です。次々とヤマ場がやってきて、あっという間に時間が過ぎて行きます。ニューイヤー駅伝の模様などは、テレビの実況中継より生々しく、ハラハラドキドキしっ放しです。

そして業界のことをよく調べてあることにも感心します。氏の専門分野ではないでしょうが、足袋業界やスポーツ業界の状況。靴に関しても、どういう走りが怪我が多いのか、どういう靴が理想なのか、かなり専門的です。

登場人物は皆キャラが立っていて“善玉”“悪玉”がはっきりしていています。これらの登場人物が躍動し、最後は勧善懲悪型の展開で必ずハッピーエンドで終わり、読み終わってすっきりするところが氏の作品が広く受け容れられる要因ではないか、と改めて思いました。近いうちにドラマ化されることは確実でしょう。

(M.T@総務部)

私の読書日記31

2016年4月1日 金曜日

ギリシャ人の物語Ⅰ 民主制の始まり

 塩 野 七 生

20160401イタリアに在住し、ヨーロッパを舞台にした歴史物語を多く執筆してきた著者の最新作。

 全三巻構成でⅠ巻は紀元前6世紀頃からのアテネスパルタを中心とした都市国家(ポリス)の成立から、二次に亘る東方の大国ペルシャとの戦いが描かれている。

(あらすじ)

ギリシャはこの時代を通じて一つの統一国家として存在したことはなく、各都市がそれぞれ独立した国家として成立しており、その数は300を超える。代表的な都市国家はアテネとスパルタであるが、この二つの国家の政治体制は全く異なっている。

スパルタはがいて(王は常時2人制で軍事のみを担当)、身分制も厳格な完全な軍事国家。生まれた子供はその時点の健康状態を見て進路が決められる。7歳になると集団生活に入り20歳まで徹底的に軍事訓練を受け、卒業時には、1週間無一文で見知らぬ土地へ放り出され、帰還する時は一人の奴隷を殺してその首を持って帰らなければならない、というすさまじい試練が課されている。

 一方アテネは身分制はあり、身分に応じた兵役義務があるものの、国家の方針を決めるのは直接、市民が参加する直接民主制。各地域からの代表者で構成する執行機関はあるが、任期は1年。有名な陶片追放で国家を追われる権力者もいる。アテネは主に経済力で成長してきた。

 これらの都市国家同士は争いが絶えず戦争ばかり。たまには戦いを止めないか、ということで始まったのがオリンピックの由来である。

 このように発展してきたギリシャ諸国が東方から興った大国ペルシャの侵略で国家存亡の危険にさらされる。普段は争っている諸国家、特にアテネとスパルタがこの時は同盟した。ペルシャの戦力はその数20~30万人、対するギリシャ軍は各国合わせても数万。戦力的には勝ち目はなかった。

 しかし、第一次ペルシャ戦役ではマラトンの戦い(紀元前490年)でアテネの陸軍がペルシャを撃退(マラソンの由来)、その10年後第二次戦役ではサラミスの海戦(紀元前480年)でアテネを中心とした海軍が勝利、陸戦ではスパルタ王レオニダスが300人の兵で戦ったテルモピュライの戦いで戦死した(「300」というタイトルで映画化された)が、プラタイアの戦い(紀元前479年)でペルシャ陸軍を撃破。

 二次に亘る戦いでペルシャ側は完全に撤退。その後百数十年間、外国の侵入はなくギリシャの隆盛が始まる。

(感想)

 歴史上の変革期には必ず英雄が現れる。これらの人物なくして変革はなかっただろうし、その国の隆盛もなかったであろう。この時期のギリシャでは、アテネのテミストクレス、スパルタのパウサニアスはその代表格であるが、戦死したレオニダスは英雄として語り継がれた一方、圧倒的劣勢の中、マラトンとサラミスでいずれも戦略を立案し勝利に導いたテミストクレス、プラタイアの戦いの功労者パウサニアスの最期は悲しい。特定の個人が活躍するとそれだけ他人の嫉妬を買うのだろうか。

私は歴史物語が好きだが、特にギリシャ、ローマの歴史が大好き。塩野氏は「ローマ人の物語」全15巻を1992年から毎年1巻ずつ刊行。これが終わると「ローマ後の地中海世界全2巻」「十字軍物語全4巻」「皇帝フリードリッヒ二世の生涯全2巻」と主にローマ後の中世ヨーロッパを中心に執筆してきた。そしていよいよ今回、ローマから前に戻ってギリシャを扱った物語が始まった。

私にとっては待望のテーマであり、ワクワクしている。今から続刊が楽しみである。

(M.T@総務部)

私の読書日記30

2015年8月11日 火曜日

流(りゅう)

 東山彰良

 流_今年上半期の芥川賞・直木賞はお笑いコンビ、ピースの又吉直樹の「火花」が芥川賞を受賞した話題で持ちきりですが、実は直木賞の方は東山彰良氏の「流」が審査員全員一致で受賞しています。全員一致というのは非常に珍しいようです。著者は台湾出身の作家です。私は「火花」は読んでいませんが、「流」は図書館で借りて読みました。

(あらすじ)

 舞台は1970年代の台湾。主人公、葉秋生(イエ・チョウシェン)の祖父葉尊麟(イエ・ヅゥリン)は中国山東省出身。先の大戦中、国民党蒋介石軍に身を投じ、遊撃隊として活躍。多くの戦闘に参加し中国共産党軍と戦い、戦果を挙げた。

 その祖父は戦争に敗れると蒋介石とともに台湾に渡り、家庭を持ち息子2人、娘1人が生まれ、長男から葉秋生が生まれた。祖父の家族には、かつての戦友が家族皆殺しになった時、唯ひとり生き残ったその息子を引き取り自分の子として育てた宇文(ユイウェン)叔父もいる。宇文叔父は秋生のことをかわいがり、秋生も宇文叔父を慕っていた。また、祖父は他人に対して大変厳しい人物ではあったが、秋生には優しく秋生は祖父が大好きだった。

 秋生が14歳の時、その祖父が自分の店で殺された。それも恨みを込められた惨殺だった。警察の捜査はされたが犯人はわからないまま経過した。
 高校に入ると秋生は友人の小戦(シャオジェン)がやくざ仲間とつるんでいるため、彼らとの関わりの中から問題を起こし、高校を退学させられ非行少年になっていく。しかし、秋生の心の奥底にはいつも祖父の死への疑惑が陰を落としていた。

 やがて、秋生は頭から離れないこの疑惑を解決するため中国へと旅立つ。そこで秋生が見たものは、自分が今まで信じていたもの全てを覆す事実だった。

(感想)

 台湾を舞台にした小説を読むのは初めてです。全く台湾の知識がなかったこともあり、たくさん勉強になりました。

 台湾社会にはいくつかの対立があります。外省人(大戦後中国から渡ってきた人)と本省人(元から台湾に住んでいる人)の対立。過去支配していた日本に対する親日派と反日派の対立。中国を頼るか自立するかの対立。

 そういう歴史や背景があり、登場人物の個性は様々です。それもあってかストーリーはとても面白く、波乱の展開が続きます。基本はミステリーですが、カーチェイスあり、やくざとの抗争あり、ほのかな初恋と苦い失恋あり、ワクワクドキドキの連続で読む人を飽きさせません。そして最後には意外な結末が待っています。

 直木賞審査員から高い評価を受けたのもうなずけます。

(M.T@総務部)

私の読書日記29

2015年7月14日 火曜日

日本の一番長い日

 半藤一利

 20150714本作は1965年(昭和40年)に発表され、1967年(昭和42年)に映画化されましたが、今回戦後70年の節目に、新たに判明した事実も加えリメイクされました。映画は8月8日封切とのこと。山崎努、役所広司、本木雅弘、松坂桃李らが出演します。(公式映画サイト http://nihon-ichi.jp/ )

終戦が決まった8月15日の前日から当日に至るまで、1時間ごとに刻々と情勢が変化した当時の状況を、詳細な調査で再現した息詰まるドキュメントです。

(あらすじ)

1945年(昭和20年)7月27日に連合国側から突きつけられたポツダム宣言を受諾するかどうか、日本政府の議論は紛糾した。沖縄戦でおびただしい民間人が犠牲になった果てに占領され、8月6日に広島、9日に長崎に原爆を落とされ、日本には戦争を継続する力はどこにも残っていなかった。その現実を直視すれば無条件降伏を受け入れ戦争を終結するしかないという外務大臣、海軍などと、本土決戦にこそ勝機ありとする陸軍とが真っ向対立、最高戦争指導会議の議決は3対3。やむなく、天皇の裁断を仰ぐ(これを聖断という)と、天皇は自らの口で「自分は無条件降伏でいいと思っている。これ以上国民に犠牲を強いることはできない」と明確に述べる。これが8月9日。しかし、陸軍が降伏条件をめぐって巻き返しを図り、8月14日再度の御前会議が開かれ同じ内容で聖断が下る。これが正午頃。

 ここに至って陸軍大臣阿南惟幾は聖断を受け入れることを決め、全陸軍に「承詔必謹」(天皇のお言葉を忠実に実行せよ)の方針を徹底させる。

 しかしながら、ここまで来てもなお戦争続行を主張するグループが存在した。それは主に近衛師団(天皇と皇居を守る軍)の若手将校らであった。8月14日深夜、時刻としては15日午前1時頃、彼らは自分たちの上司でもある近衛師団長を殺害し、師団長命令を偽造、全近衛師団に、皇居の封鎖、玉音放送録音盤の奪回を指令した。彼らの狙いは15日正午に予定されている玉音放送を中止させるとともに、自らの決起により陸軍全体を立ち上がらせクーデターを実現することであった。

 彼らの叛乱はやがて近衛師団を管轄する東部軍管区の知るところとなり、明け方には鎮圧されたが、この数時間の間、実際に皇居は彼らに蹂躙され、天皇の側近たちは軟禁されたりもしたのである。これを宮城(きゅうじょう)事件と言う。

(感想)

 終戦の日、玉音放送に至る過程でこのような大事件が起こっていたとはほとんど知りませんでした。大変勉強になった本です。

 これらの経緯を知るといろいろな感想を持ちます。

一つは、国の意思が終戦に決するまでに天皇の果たした役割の大きさです。多くの要人が戦争継続を無理だとわかっていても、本土決戦、一億総玉砕を主張し、ここまで戦争を主導してきた陸軍を抑えることは天皇にしかできなかったのでしょう。ただ、逆に言えば、終戦を決めることができたのであれば、中国で関東軍が暴走をし始めた時に、あるいは米国と戦争を始める時、なぜ止められなかったのか、という疑問は残ります。

二つ目は、阿南陸相についてです。これまでの私の印象は、最後まで終戦に反対した陸軍のボスという悪いイメージでしたが、彼も戦況の厳しさを理解しつつも陸軍全体の空気を代弁して、終戦に反対せざるを得なかったのであろう、と理解できます。それが、聖断を受け入れた後の対応に表れています。宮城事件が本格的なクーデターにならなかったのは、彼が陸軍を掌握し軽挙妄動を諌めていたからでしょう。映画では役所広司が演じます。なかなかの適役ではないでしょうか。

 戦争の記憶が薄れて行く今、国民必読の書ではないかと思います。

(M.T@総務部)

私の読書日記28

2015年6月24日 水曜日

ちゃんぽん食べたかっ!

さだ まさし

 2月の「風に立つライオン」に続きまた、さだまさしの本です。

20150624この作品は自伝的小説で、中学生、高校生時代のさだが、音楽に悩み、進路に迷い、友情を育み、苦しみながら成長していく青春物語となっています。登場人物は全て実名であり、家族や中学、高校の同級生や先生などの思い出には今の時代から見るとちょっとヤバイ話もありますが、実話というところが面白いところです。あとがきでは、この本に登場する先生や友人たちの“今”や、その後の交友状況などにも触れられ、さだにとってこの人たちとの思い出が宝物であり、交流を今も大切にしていることがよくわかります。
 この本はNHKで現在放送中の土曜ドラマ「ちやんぽん食べたか」の原作となっています。なお、「食べたかっ」は「食べたか?」ではなく「食べたい!」という長崎弁です。

(あらすじ)

 さだは長崎生まれ。家は比較的裕福で3歳の頃からヴァイオリンを習い始め、小学校5年と6年の時、九州地方のヴァイオリンコンクールで3位、2位となり、その時の指導者に、東京の高名なヴァイオリン奏者に師事するよう説得される。
 中学1年で上京したさだは一人で下宿生活をしながら、その先生に教えを受ける。しかし、父の事業の失敗で家計の状況は一変し、それを知ったさだは月謝の安い指導者に鞍替えする。ヴァイオリニストを目指すはずたった人生はこの辺りから狂い始め、志望した高校に受験失敗し、やむなく国学院高校に進学する。
 先行きが怪しくなってきたヴァイオリニストへの道だが、中学、高校生活は楽しかった。中学時代はギターに夢中になり、高校時代はクラス仲間とバンドを結成。自ら歌をつくり、楽譜を書き、ギター弾き、コンクールにも出る(結果は落選)。
 やがて、自分にヴァイオリンの才能が本当にあるのか、ヴァイオリニストを目指すことが自分や家族にとって幸せな道なのか、自分の進路に悩みに悩む。
 そして高校3年の終わり、大きな決断をする。それは自分を東京まで送り出し、ヴァイオリンの道を進ませてくれた両親やこれまでの指導者の期待を裏切ることであった。

(感想)

 さだは、クラスの中心で人気者。「おまえがいないと学校が面白くないから、病気になっても毎日出て来い」と言われるほどですから、数々のエピソードが全て笑えます。
 ただ、読んでいて驚くのはさだの才能の幅広さです。
 まずは音楽。幼少期からヴァイオリンを習っているので、絶対音感がある。ギターのチューニングも自分の耳だけを頼りにできてしまう。初めて聴く曲でも数回聴けば、その曲で使われている楽器の音階を一つずつ拾い出し、コードをつけ、二時間ほどでパーツごとの楽譜を作ってしまう。
 作も簡単にこなす。コンクールに出だ高校時代のバンドはさだのオリジナル曲で、作詞も担当。
 次に、落語です。中学時代からの落語好きで、友人の両親に小噺を披露しては食事をごちそうになったり、高校の落研の会長になったり。さだのコンサートにおけるトークの面白さはここから来ているのです。
 そして小説です。高校時代に小説を書き始め、回し読みされていてクラスメートは熱心な読者でした。
 こんな才能があるのですから、ヴァイオリニストの道を諦めて結果は正解でしたが、当時は真剣に悩んだようです。
 さだまさしファンでなくても、読んで間違いなく楽しめるお薦めの本です。

 ドラマの方も、全9回の内4回分が終了、あと5回です。ストーリーは多少変えてありますが、原作の面白さが凝縮されている感じです。是非ご覧ください。

(M.T@総務部)

私の読書日記27

2015年3月4日 水曜日

窓から逃げた100歳老人

ヨナス・ヨナソン

t20150304書店で見ていて、タイトルと表紙の面白さについ手に取ってしまった1冊。作者のことも内容も全く知らずに読み始めました。

(あらすじ)
 アラン・カールソンはスウェーデンの、とある田舎町の老人ホームで100歳の誕生日を迎えていた。その日、スタッフ一同が市長も呼んでお祝をしてくれることになっていた。しかしアランはそれが嫌でたまらない。その老人ホームは規則が多く、それまでの人生を自由に過ごしてきたアランには窮屈だし、施設の所長ともウマが合わず、誕生日を祝われるなんでまっぴらご免。パーティ開始の1時間前、スリッパのままこっそり窓から逃げ出した

 バス停まで逃げると、近寄ってきた若い男に、トイレへ行きたいからスーツケースを預かってくれないかと頼まれ、預かると男がトイレから戻る前にバスが到着。アランはスーツケースを持ってバスに乗ると、バスは発車。男はその場に取り残されてしまった。

  このスーツケースが問題の火種。実は、若い男はギャングの一味で中身は麻薬取引で得た現金。とんだしくじりをした男は老人を追う。一方、アランの失踪が発覚した老人ホームでも大騒ぎになり、警察が捜索を開始。

 警察とギャングの双方から追われる100歳老人のドタバタ逃走劇がここから始まる。

  逃走劇と並行して、アランの100歳までの波乱に充ちた人生が綴られる。10歳で父母を亡くし、ダイナマイト工場で働き始めたアランは、爆発の専門家になっていく。その腕を買われてスペインの内戦に参加。フランコ将軍を救ったり、米国に渡り原爆の知識を伝えトルーマン大統領と友人になったり。はたまた中国に渡り、捕虜になっていた江清(毛沢東の妻)を助けたかと思えば、イランでつかまり牢獄に入れられたり、そこを脱獄後スウェーデンに戻っていたら拉致されてソ連の収容所へ入ったり、と奇想天外なストーリーが展開する。

(感想)
 逃走劇の方は、「ブレーメンの音楽隊」のように行く先々で仲間が増えて行き、「ホームアローン」のように追手が次々とヘマをして、映画を見ているように笑えます。

 アランの人生ストーリーの方は、上記の他にもアインシュタインの弟(実在?)やスターリンブレジネフチャーチル毛沢東金日成、(10歳の頃の)金正日ら当時の世界各国の指導者たちが総出演。とにかく破茶滅茶なストーリー。

 そして、最後にこの二つのストーリーが合流し大団円。読んで何も得るところはないですが、馬鹿馬鹿しくて楽しい時間を過ごせることは保証します。 既に映画化されていて、日本でも昨年秋に公開されていたようです(タイトル「100歳の華麗なる冒険」)。
http://www.100sai-movie.jp/

(M.T@総務部)

私の読書日記26

2015年2月2日 月曜日

風に立つライオン

さだ まさし

  201502011私の大好きなシンガーソングライター、さだまさしが1987年に作った歌をモチーフに、2013年に自ら小説化したものです。

 歌の方の「風に立つライオン」は、アフリカのケニアに派遣され、現地の住民や子供たちの病気の治療に取り組む若い医師が、かつて恋人だった女性から結婚をするとの手紙をもらい、その女性に返信する手紙の中で、ケニアの自然の偉大さ、子供たちの澄んだ心、ケニアで医療に携わることの使命感を綴る、という設定です。多くの医師や外国で働く日本人たちの間で愛されている曲です。

 201502012この曲の大ファンであった大沢たかおが、さだまさしに懇願し小説化が実現しました。そして彼の主演で映画化されこの3月公開予定です。是非、観に行って頂きたい映画です。(映画公式サイト http://kaze-lion.com/

(あらすじ)
 1987年長崎大学病院の医師、島田航一郎は仲間の医師とともにケニアの病院に派遣される。子供の頃、シュバイツアーに憧れて医師になった航一郎はアフリカの地で現地の住民たちのために働きたいという夢を持っていたため、志願しての派遣であった。その時恋人であった、秋島貴子は長崎の離島で地域医療に従事しており、地元の住民を見捨てて航一郎についていくわけにはいかなかった。
 現地へ着いて目にしたものは、内戦で負傷した多くの兵士たちであり、助かる見込みのある病人を優先して治療し、見込みの少ない病人は見捨てざるを得ない現実だった。中には、少年兵も多くいた。
 その中に、決して周囲のスタッフや子供たちにも心を開かない少年、ンドゥングがいた。ンドゥングは反政府軍に村を襲われ、父母を目の前で殺されていた。その上、捕らわれ少年兵とされ、9人の相手を殺してきていた。それが彼の心の闇だった。航一郎はンドゥングに対し、何とか心を開かせようと決意し、明るくそして粘り強く接し続ける。

(感想)
 歌の方はケニアでの話だけですが、小説は1991年のケニアから20年後の日本に舞台が移ります。2011年の震災後の日本です。ケニアにいて日本の震災の報に接したンドゥングは、すぐに日本に飛びます。それは自分の心を開いてくれた航一郎の恩に報いるため、日本からの支援にお返しをするためです。
 医師になっていたンドゥングは日本で多くの命を救います。航一郎によって救われた命が日本で別の人の命を救うのです。そしてンドゥングによって救われた命がまたいつか誰かの命を救う。そんな「命のバトン」がこの小説のテーマです。
 読んで泣くこと必定。絶対にお薦めの一冊です。全編に亘って関係者のインタビューまたは手紙・メール文、つまり語り口調で構成されていますので、すごく読みやすい本です。文庫版もあります。

(M.T@総務部)

私の読書日記25

2015年1月8日 木曜日

村上海賊の娘(上)(下)

和田 竜(わだ りょう)

t201501083 2014年度の「本屋大賞」受賞作です。本屋大賞は4月に発表されたのですが、読むのがここまで遅くなったのは図書館でこの本の予約がいっぱいだったためです。作者和田竜は映画化された「のぼうの城」も書いており、歴史を題材としたエンターテイメントなお話が得意のようです。

(あらすじ)

舞台は天正4年(1576年)、信長と石山本願寺との争いで、信長が本願寺を包囲し兵糧攻めを展開中に起こった海上での戦い。

t201501084信長の兵糧攻めに苦しむ本願寺側は友好関係にあった毛利輝元に食糧の輸送を懇願する。その量、米10万石。毛利陣営には慎重論もあったが本願寺支援を決定。食料の輸送は海路しかなく、自前の水軍では足りず、当時瀬戸内の海上を支配していた村上水軍に協力を依頼する。

村上水軍には因島(いんのしま)村上、来島(くるしま)村上、能島(のしま)村上と三家あり、この内、因島と来島は協力を快諾。しかし能島村上は独立心が強く、なかなかウンと言わない。説得を重ねる毛利に対し、能島村上の首領村上武吉が出した条件は、20歳になる娘、(きょう)を毛利の武将に嫁がせること。実は、景は醜女で大女、おまけに海賊働きが大好きな男勝りの荒くれ者で、嫁の貰い手がない。景がかわいくて仕方がない武吉は困っていたのである。その条件を毛利が呑み、三家合わせて兵糧を運ぶことになる。

兵糧を積む船は700隻、これを守る兵士用に300隻の計1000隻の大船団が出来上がった。

一方、信長も泉州(今の大阪)の水軍に兵糧搬入阻止を命ずる。水軍を束ねるのは眞鍋海賊の首領、眞鍋七五三兵衛(しめのひょうえ)。こちらも300隻の船で大阪湾を封鎖する。

そして大阪湾で二つの水軍が激突し、海賊vs海賊の激しい海上戦が展開される。

(感想)

歴史上、木津川口の戦いと言われ、実際にあった戦いのようです。史実に基づいてはいますが、戦闘の様子は作者の創作力がいかんなく発揮され、映画を見ているようなリアルな描写が続きます。それぞれの登場人物もキャラが立っており、特に七五三兵衛はものすごい。プロレスラーのような大男がターミネーターのように不死身で、鯨を殺すように銛(もり)を投げ、兵士と船を一緒に破壊してしまいます。

映画になることを想定して書いているのではないかと思いますし、実際、映画化してCGをいっぱい使わないと戦闘シーンのすごさは描けないでしょう。レッドクリフ以上の海戦映画が出来上がるでしょう。

では、映画化したらキャスティングはどうなるのか。景は醜女の大女となっていますので選ぶのが難しい。南海キャンディーズのしずちゃんか、森三中の大島か。でも、泉州の侍からは別嬪と言われている(泉州では女性美への観点がまるで違うらしい)ので、米倉涼子にメイクをさせればいいのではないか。ずっとミスターXの大門未知子のイメージで読んでいました。

七五三兵衛は・・・、あんな大男、映画界にはいないので思いつきません。

(M.T@総務部)

私の読書日記24

2014年12月2日 火曜日

ゼロの迎撃

安生 正

t20141202 安生正(あんじょうただし)氏は、本作がデビュー2作目という新進の作家です。ですが、デビュー作となった「生存者ゼロ」は文庫になりヒットしています。

<あらすじ>

 201X年7月のある日、強力な台風が関東地方を直撃し、暴風雨が吹き荒れる深夜、東京都江東区のマンションが突然、武装グループに襲撃される。同時刻、都内各所で爆発事件が起こる。襲撃部隊と警察の銃撃戦が起きるが、日本が誇る特殊警察部隊SATは一瞬の内に壊滅、千葉から応援部隊を派遣しようとした自衛隊輸送用ヘリコプター7機が全て撃墜され、警察、自衛隊双方に多数の犠牲者が出る。そして政府各官庁のHPは何者かに乗っ取られ「明日朝までに東京を殲滅する」という予告が出される。

 敵の正体は?背景は?規模は?狙いは?どうやって国内に潜入したのか?これらが全く分からないまま、国家安全保障会議が開かれるが、様々な国内法にがんじがらめに縛られた状態で、自衛隊の出動すら決められない。まして米軍に出動要請など、もし米軍の放った銃弾で一般市民が犠牲になったら、と考えるととてもできない。

 そんな中、自衛隊の情報分析官である真下俊彦は、相手が北朝鮮の特殊部隊であり、核爆弾を持ち込んでいる可能性があることを突き止める。残された時間は数時間。「明朝、東京が核攻撃を受ける」危機を回避するために、敵を追い、拠点に迫る。

<感想>

タイトルである「ゼロの迎撃」のゼロとは、国内で起こる敵国の武装攻撃に対して、迎え撃つ日本側には何ひとつ準備ができていないことを言っているのではないか、と思います。日本の防衛は、水際で敵を迎え撃つことを想定しているので、外からの攻撃に対しては備えがあるものの、国内で起こる攻撃に対しては全く無力であり、様々なシビリアンコントロールで身動きできないこと、決断に時間がかかることを敵は見抜いており、日本のその弱点を突いてきます。

自衛隊の出動を決断した時の梶塚首相のスピーチは感動的です。

この小説のような設定が荒唐無稽なこととは思えず、あり得ない話ではないと思います。そのような場合の備えが、法的な整備も含めて全然できていない。作者はこのような日本の防衛面での大問題を提起しているのだと思います。

そのような難しい問題はともかく、ストーリーは展開がスリリングで手に汗握り、久しぶりに夜更かしをしてしまいました。私の中では今年のベスト作品です。年末の「このミステリーがすごい」での上位ランクインや、次回の本屋大賞などいくつかのポピュラーな文芸賞にノミネートされることになるのでは、と予想します。

映画化されるとしたら、首相は北大路欣也しかいない。主人公の真下は・・・ウーン、また岡田准一という訳にもいかないし、竹ノ内豊くらいかな・・・などと想像して読むのも楽しいものです。

(M.T@総務部)

私の読書日記23

2014年11月6日 木曜日

スケープゴート

幸田真音

t20141106以前のブログ(2013年12月4日)でも紹介した幸田真音の最新作です。幸田真音はビジネス小説、特に金融や財政を題材にした小説を得意としています。本作も氏の得意な分野で、主人公が女性、それも金融、財政を専門としている大学教授です。

(あらすじ)
 三崎皓子(みさきこうこ)は51歳。大学卒業後、米国の証券会社を皮切りにいくつかのシンクタンクや金融関係の会社を渡り歩き、今は日本の某大学の教授に落ち着いている。TVなどで日本の金融財政政策について度々発言し、ルックスも良く、お茶の間の人気も出てきている。
 
 そこへ目をつけたのが、政権を奪い返した与党の山城総裁。新政権の目玉として民間から閣僚を登用することにし、皓子に白羽の矢が立った。いきなり閣僚、しかも金融担当大臣という重要な役割を負わされた皓子であったが、新政権の人気取りに利用されるだけのお飾りではなかった。就任初日から地方銀行の取り付け騒ぎという危機に見舞われたが、これを機敏に対処し切り抜けると、自身のこれまでの経験や人脈を生かし、次々と難題をクリア。実力閣僚として評価されるようになる。

 民間からの登用であり、議員ではない立場であったが、次の参議院選挙では立候補を要請される。家庭では娘との確執があるなど問題を抱えていて、当初、議員だけはならないという約束で引き受けた閣僚であったが、その意向を無視して話は進み、立候補が発表される。

 そして、選挙には当選するが、その後には更に衝撃的な運命が待ち受けていた・・・

(感想)
 先頃、女性閣僚二人の同日辞任をいうニュースがありました。それを連想させますが、この主人公の違いは、自身の明確な政策があり、それを実現させるための情熱や経験、人脈があることです。多くの政治家たちが、自分の次の選挙に有利になる政策しか関心がない中で、主人公が真に日本の将来を考えて政策を訴える姿は、今の政治家もこうでなければ、と考えさせられることばかりです。

 タイトルから想像すると、結局最後には閣僚辞任で終わるはず、と思いながら読み進めましたが、意外にもそうはなりません。連載の途中でストーリーを変えたのかな、想像してしまいました。

(M.T@総務部)