カテゴリー別アーカイブ: 私の読書日記

私の読書日記30

2015年8月11日 火曜日

流(りゅう)

 東山彰良

 流_今年上半期の芥川賞・直木賞はお笑いコンビ、ピースの又吉直樹の「火花」が芥川賞を受賞した話題で持ちきりですが、実は直木賞の方は東山彰良氏の「流」が審査員全員一致で受賞しています。全員一致というのは非常に珍しいようです。著者は台湾出身の作家です。私は「火花」は読んでいませんが、「流」は図書館で借りて読みました。

(あらすじ)

 舞台は1970年代の台湾。主人公、葉秋生(イエ・チョウシェン)の祖父葉尊麟(イエ・ヅゥリン)は中国山東省出身。先の大戦中、国民党蒋介石軍に身を投じ、遊撃隊として活躍。多くの戦闘に参加し中国共産党軍と戦い、戦果を挙げた。

 その祖父は戦争に敗れると蒋介石とともに台湾に渡り、家庭を持ち息子2人、娘1人が生まれ、長男から葉秋生が生まれた。祖父の家族には、かつての戦友が家族皆殺しになった時、唯ひとり生き残ったその息子を引き取り自分の子として育てた宇文(ユイウェン)叔父もいる。宇文叔父は秋生のことをかわいがり、秋生も宇文叔父を慕っていた。また、祖父は他人に対して大変厳しい人物ではあったが、秋生には優しく秋生は祖父が大好きだった。

 秋生が14歳の時、その祖父が自分の店で殺された。それも恨みを込められた惨殺だった。警察の捜査はされたが犯人はわからないまま経過した。
 高校に入ると秋生は友人の小戦(シャオジェン)がやくざ仲間とつるんでいるため、彼らとの関わりの中から問題を起こし、高校を退学させられ非行少年になっていく。しかし、秋生の心の奥底にはいつも祖父の死への疑惑が陰を落としていた。

 やがて、秋生は頭から離れないこの疑惑を解決するため中国へと旅立つ。そこで秋生が見たものは、自分が今まで信じていたもの全てを覆す事実だった。

(感想)

 台湾を舞台にした小説を読むのは初めてです。全く台湾の知識がなかったこともあり、たくさん勉強になりました。

 台湾社会にはいくつかの対立があります。外省人(大戦後中国から渡ってきた人)と本省人(元から台湾に住んでいる人)の対立。過去支配していた日本に対する親日派と反日派の対立。中国を頼るか自立するかの対立。

 そういう歴史や背景があり、登場人物の個性は様々です。それもあってかストーリーはとても面白く、波乱の展開が続きます。基本はミステリーですが、カーチェイスあり、やくざとの抗争あり、ほのかな初恋と苦い失恋あり、ワクワクドキドキの連続で読む人を飽きさせません。そして最後には意外な結末が待っています。

 直木賞審査員から高い評価を受けたのもうなずけます。

(M.T@総務部)

私の読書日記29

2015年7月14日 火曜日

日本の一番長い日

 半藤一利

 20150714本作は1965年(昭和40年)に発表され、1967年(昭和42年)に映画化されましたが、今回戦後70年の節目に、新たに判明した事実も加えリメイクされました。映画は8月8日封切とのこと。山崎努、役所広司、本木雅弘、松坂桃李らが出演します。(公式映画サイト http://nihon-ichi.jp/ )

終戦が決まった8月15日の前日から当日に至るまで、1時間ごとに刻々と情勢が変化した当時の状況を、詳細な調査で再現した息詰まるドキュメントです。

(あらすじ)

1945年(昭和20年)7月27日に連合国側から突きつけられたポツダム宣言を受諾するかどうか、日本政府の議論は紛糾した。沖縄戦でおびただしい民間人が犠牲になった果てに占領され、8月6日に広島、9日に長崎に原爆を落とされ、日本には戦争を継続する力はどこにも残っていなかった。その現実を直視すれば無条件降伏を受け入れ戦争を終結するしかないという外務大臣、海軍などと、本土決戦にこそ勝機ありとする陸軍とが真っ向対立、最高戦争指導会議の議決は3対3。やむなく、天皇の裁断を仰ぐ(これを聖断という)と、天皇は自らの口で「自分は無条件降伏でいいと思っている。これ以上国民に犠牲を強いることはできない」と明確に述べる。これが8月9日。しかし、陸軍が降伏条件をめぐって巻き返しを図り、8月14日再度の御前会議が開かれ同じ内容で聖断が下る。これが正午頃。

 ここに至って陸軍大臣阿南惟幾は聖断を受け入れることを決め、全陸軍に「承詔必謹」(天皇のお言葉を忠実に実行せよ)の方針を徹底させる。

 しかしながら、ここまで来てもなお戦争続行を主張するグループが存在した。それは主に近衛師団(天皇と皇居を守る軍)の若手将校らであった。8月14日深夜、時刻としては15日午前1時頃、彼らは自分たちの上司でもある近衛師団長を殺害し、師団長命令を偽造、全近衛師団に、皇居の封鎖、玉音放送録音盤の奪回を指令した。彼らの狙いは15日正午に予定されている玉音放送を中止させるとともに、自らの決起により陸軍全体を立ち上がらせクーデターを実現することであった。

 彼らの叛乱はやがて近衛師団を管轄する東部軍管区の知るところとなり、明け方には鎮圧されたが、この数時間の間、実際に皇居は彼らに蹂躙され、天皇の側近たちは軟禁されたりもしたのである。これを宮城(きゅうじょう)事件と言う。

(感想)

 終戦の日、玉音放送に至る過程でこのような大事件が起こっていたとはほとんど知りませんでした。大変勉強になった本です。

 これらの経緯を知るといろいろな感想を持ちます。

一つは、国の意思が終戦に決するまでに天皇の果たした役割の大きさです。多くの要人が戦争継続を無理だとわかっていても、本土決戦、一億総玉砕を主張し、ここまで戦争を主導してきた陸軍を抑えることは天皇にしかできなかったのでしょう。ただ、逆に言えば、終戦を決めることができたのであれば、中国で関東軍が暴走をし始めた時に、あるいは米国と戦争を始める時、なぜ止められなかったのか、という疑問は残ります。

二つ目は、阿南陸相についてです。これまでの私の印象は、最後まで終戦に反対した陸軍のボスという悪いイメージでしたが、彼も戦況の厳しさを理解しつつも陸軍全体の空気を代弁して、終戦に反対せざるを得なかったのであろう、と理解できます。それが、聖断を受け入れた後の対応に表れています。宮城事件が本格的なクーデターにならなかったのは、彼が陸軍を掌握し軽挙妄動を諌めていたからでしょう。映画では役所広司が演じます。なかなかの適役ではないでしょうか。

 戦争の記憶が薄れて行く今、国民必読の書ではないかと思います。

(M.T@総務部)

私の読書日記28

2015年6月24日 水曜日

ちゃんぽん食べたかっ!

さだ まさし

 2月の「風に立つライオン」に続きまた、さだまさしの本です。

20150624この作品は自伝的小説で、中学生、高校生時代のさだが、音楽に悩み、進路に迷い、友情を育み、苦しみながら成長していく青春物語となっています。登場人物は全て実名であり、家族や中学、高校の同級生や先生などの思い出には今の時代から見るとちょっとヤバイ話もありますが、実話というところが面白いところです。あとがきでは、この本に登場する先生や友人たちの“今”や、その後の交友状況などにも触れられ、さだにとってこの人たちとの思い出が宝物であり、交流を今も大切にしていることがよくわかります。
 この本はNHKで現在放送中の土曜ドラマ「ちやんぽん食べたか」の原作となっています。なお、「食べたかっ」は「食べたか?」ではなく「食べたい!」という長崎弁です。

(あらすじ)

 さだは長崎生まれ。家は比較的裕福で3歳の頃からヴァイオリンを習い始め、小学校5年と6年の時、九州地方のヴァイオリンコンクールで3位、2位となり、その時の指導者に、東京の高名なヴァイオリン奏者に師事するよう説得される。
 中学1年で上京したさだは一人で下宿生活をしながら、その先生に教えを受ける。しかし、父の事業の失敗で家計の状況は一変し、それを知ったさだは月謝の安い指導者に鞍替えする。ヴァイオリニストを目指すはずたった人生はこの辺りから狂い始め、志望した高校に受験失敗し、やむなく国学院高校に進学する。
 先行きが怪しくなってきたヴァイオリニストへの道だが、中学、高校生活は楽しかった。中学時代はギターに夢中になり、高校時代はクラス仲間とバンドを結成。自ら歌をつくり、楽譜を書き、ギター弾き、コンクールにも出る(結果は落選)。
 やがて、自分にヴァイオリンの才能が本当にあるのか、ヴァイオリニストを目指すことが自分や家族にとって幸せな道なのか、自分の進路に悩みに悩む。
 そして高校3年の終わり、大きな決断をする。それは自分を東京まで送り出し、ヴァイオリンの道を進ませてくれた両親やこれまでの指導者の期待を裏切ることであった。

(感想)

 さだは、クラスの中心で人気者。「おまえがいないと学校が面白くないから、病気になっても毎日出て来い」と言われるほどですから、数々のエピソードが全て笑えます。
 ただ、読んでいて驚くのはさだの才能の幅広さです。
 まずは音楽。幼少期からヴァイオリンを習っているので、絶対音感がある。ギターのチューニングも自分の耳だけを頼りにできてしまう。初めて聴く曲でも数回聴けば、その曲で使われている楽器の音階を一つずつ拾い出し、コードをつけ、二時間ほどでパーツごとの楽譜を作ってしまう。
 作も簡単にこなす。コンクールに出だ高校時代のバンドはさだのオリジナル曲で、作詞も担当。
 次に、落語です。中学時代からの落語好きで、友人の両親に小噺を披露しては食事をごちそうになったり、高校の落研の会長になったり。さだのコンサートにおけるトークの面白さはここから来ているのです。
 そして小説です。高校時代に小説を書き始め、回し読みされていてクラスメートは熱心な読者でした。
 こんな才能があるのですから、ヴァイオリニストの道を諦めて結果は正解でしたが、当時は真剣に悩んだようです。
 さだまさしファンでなくても、読んで間違いなく楽しめるお薦めの本です。

 ドラマの方も、全9回の内4回分が終了、あと5回です。ストーリーは多少変えてありますが、原作の面白さが凝縮されている感じです。是非ご覧ください。

(M.T@総務部)

私の読書日記27

2015年3月4日 水曜日

窓から逃げた100歳老人

ヨナス・ヨナソン

t20150304書店で見ていて、タイトルと表紙の面白さについ手に取ってしまった1冊。作者のことも内容も全く知らずに読み始めました。

(あらすじ)
 アラン・カールソンはスウェーデンの、とある田舎町の老人ホームで100歳の誕生日を迎えていた。その日、スタッフ一同が市長も呼んでお祝をしてくれることになっていた。しかしアランはそれが嫌でたまらない。その老人ホームは規則が多く、それまでの人生を自由に過ごしてきたアランには窮屈だし、施設の所長ともウマが合わず、誕生日を祝われるなんでまっぴらご免。パーティ開始の1時間前、スリッパのままこっそり窓から逃げ出した

 バス停まで逃げると、近寄ってきた若い男に、トイレへ行きたいからスーツケースを預かってくれないかと頼まれ、預かると男がトイレから戻る前にバスが到着。アランはスーツケースを持ってバスに乗ると、バスは発車。男はその場に取り残されてしまった。

  このスーツケースが問題の火種。実は、若い男はギャングの一味で中身は麻薬取引で得た現金。とんだしくじりをした男は老人を追う。一方、アランの失踪が発覚した老人ホームでも大騒ぎになり、警察が捜索を開始。

 警察とギャングの双方から追われる100歳老人のドタバタ逃走劇がここから始まる。

  逃走劇と並行して、アランの100歳までの波乱に充ちた人生が綴られる。10歳で父母を亡くし、ダイナマイト工場で働き始めたアランは、爆発の専門家になっていく。その腕を買われてスペインの内戦に参加。フランコ将軍を救ったり、米国に渡り原爆の知識を伝えトルーマン大統領と友人になったり。はたまた中国に渡り、捕虜になっていた江清(毛沢東の妻)を助けたかと思えば、イランでつかまり牢獄に入れられたり、そこを脱獄後スウェーデンに戻っていたら拉致されてソ連の収容所へ入ったり、と奇想天外なストーリーが展開する。

(感想)
 逃走劇の方は、「ブレーメンの音楽隊」のように行く先々で仲間が増えて行き、「ホームアローン」のように追手が次々とヘマをして、映画を見ているように笑えます。

 アランの人生ストーリーの方は、上記の他にもアインシュタインの弟(実在?)やスターリンブレジネフチャーチル毛沢東金日成、(10歳の頃の)金正日ら当時の世界各国の指導者たちが総出演。とにかく破茶滅茶なストーリー。

 そして、最後にこの二つのストーリーが合流し大団円。読んで何も得るところはないですが、馬鹿馬鹿しくて楽しい時間を過ごせることは保証します。 既に映画化されていて、日本でも昨年秋に公開されていたようです(タイトル「100歳の華麗なる冒険」)。
http://www.100sai-movie.jp/

(M.T@総務部)

私の読書日記26

2015年2月2日 月曜日

風に立つライオン

さだ まさし

  201502011私の大好きなシンガーソングライター、さだまさしが1987年に作った歌をモチーフに、2013年に自ら小説化したものです。

 歌の方の「風に立つライオン」は、アフリカのケニアに派遣され、現地の住民や子供たちの病気の治療に取り組む若い医師が、かつて恋人だった女性から結婚をするとの手紙をもらい、その女性に返信する手紙の中で、ケニアの自然の偉大さ、子供たちの澄んだ心、ケニアで医療に携わることの使命感を綴る、という設定です。多くの医師や外国で働く日本人たちの間で愛されている曲です。

 201502012この曲の大ファンであった大沢たかおが、さだまさしに懇願し小説化が実現しました。そして彼の主演で映画化されこの3月公開予定です。是非、観に行って頂きたい映画です。(映画公式サイト http://kaze-lion.com/

(あらすじ)
 1987年長崎大学病院の医師、島田航一郎は仲間の医師とともにケニアの病院に派遣される。子供の頃、シュバイツアーに憧れて医師になった航一郎はアフリカの地で現地の住民たちのために働きたいという夢を持っていたため、志願しての派遣であった。その時恋人であった、秋島貴子は長崎の離島で地域医療に従事しており、地元の住民を見捨てて航一郎についていくわけにはいかなかった。
 現地へ着いて目にしたものは、内戦で負傷した多くの兵士たちであり、助かる見込みのある病人を優先して治療し、見込みの少ない病人は見捨てざるを得ない現実だった。中には、少年兵も多くいた。
 その中に、決して周囲のスタッフや子供たちにも心を開かない少年、ンドゥングがいた。ンドゥングは反政府軍に村を襲われ、父母を目の前で殺されていた。その上、捕らわれ少年兵とされ、9人の相手を殺してきていた。それが彼の心の闇だった。航一郎はンドゥングに対し、何とか心を開かせようと決意し、明るくそして粘り強く接し続ける。

(感想)
 歌の方はケニアでの話だけですが、小説は1991年のケニアから20年後の日本に舞台が移ります。2011年の震災後の日本です。ケニアにいて日本の震災の報に接したンドゥングは、すぐに日本に飛びます。それは自分の心を開いてくれた航一郎の恩に報いるため、日本からの支援にお返しをするためです。
 医師になっていたンドゥングは日本で多くの命を救います。航一郎によって救われた命が日本で別の人の命を救うのです。そしてンドゥングによって救われた命がまたいつか誰かの命を救う。そんな「命のバトン」がこの小説のテーマです。
 読んで泣くこと必定。絶対にお薦めの一冊です。全編に亘って関係者のインタビューまたは手紙・メール文、つまり語り口調で構成されていますので、すごく読みやすい本です。文庫版もあります。

(M.T@総務部)

私の読書日記25

2015年1月8日 木曜日

村上海賊の娘(上)(下)

和田 竜(わだ りょう)

t201501083 2014年度の「本屋大賞」受賞作です。本屋大賞は4月に発表されたのですが、読むのがここまで遅くなったのは図書館でこの本の予約がいっぱいだったためです。作者和田竜は映画化された「のぼうの城」も書いており、歴史を題材としたエンターテイメントなお話が得意のようです。

(あらすじ)

舞台は天正4年(1576年)、信長と石山本願寺との争いで、信長が本願寺を包囲し兵糧攻めを展開中に起こった海上での戦い。

t201501084信長の兵糧攻めに苦しむ本願寺側は友好関係にあった毛利輝元に食糧の輸送を懇願する。その量、米10万石。毛利陣営には慎重論もあったが本願寺支援を決定。食料の輸送は海路しかなく、自前の水軍では足りず、当時瀬戸内の海上を支配していた村上水軍に協力を依頼する。

村上水軍には因島(いんのしま)村上、来島(くるしま)村上、能島(のしま)村上と三家あり、この内、因島と来島は協力を快諾。しかし能島村上は独立心が強く、なかなかウンと言わない。説得を重ねる毛利に対し、能島村上の首領村上武吉が出した条件は、20歳になる娘、(きょう)を毛利の武将に嫁がせること。実は、景は醜女で大女、おまけに海賊働きが大好きな男勝りの荒くれ者で、嫁の貰い手がない。景がかわいくて仕方がない武吉は困っていたのである。その条件を毛利が呑み、三家合わせて兵糧を運ぶことになる。

兵糧を積む船は700隻、これを守る兵士用に300隻の計1000隻の大船団が出来上がった。

一方、信長も泉州(今の大阪)の水軍に兵糧搬入阻止を命ずる。水軍を束ねるのは眞鍋海賊の首領、眞鍋七五三兵衛(しめのひょうえ)。こちらも300隻の船で大阪湾を封鎖する。

そして大阪湾で二つの水軍が激突し、海賊vs海賊の激しい海上戦が展開される。

(感想)

歴史上、木津川口の戦いと言われ、実際にあった戦いのようです。史実に基づいてはいますが、戦闘の様子は作者の創作力がいかんなく発揮され、映画を見ているようなリアルな描写が続きます。それぞれの登場人物もキャラが立っており、特に七五三兵衛はものすごい。プロレスラーのような大男がターミネーターのように不死身で、鯨を殺すように銛(もり)を投げ、兵士と船を一緒に破壊してしまいます。

映画になることを想定して書いているのではないかと思いますし、実際、映画化してCGをいっぱい使わないと戦闘シーンのすごさは描けないでしょう。レッドクリフ以上の海戦映画が出来上がるでしょう。

では、映画化したらキャスティングはどうなるのか。景は醜女の大女となっていますので選ぶのが難しい。南海キャンディーズのしずちゃんか、森三中の大島か。でも、泉州の侍からは別嬪と言われている(泉州では女性美への観点がまるで違うらしい)ので、米倉涼子にメイクをさせればいいのではないか。ずっとミスターXの大門未知子のイメージで読んでいました。

七五三兵衛は・・・、あんな大男、映画界にはいないので思いつきません。

(M.T@総務部)

私の読書日記24

2014年12月2日 火曜日

ゼロの迎撃

安生 正

t20141202 安生正(あんじょうただし)氏は、本作がデビュー2作目という新進の作家です。ですが、デビュー作となった「生存者ゼロ」は文庫になりヒットしています。

<あらすじ>

 201X年7月のある日、強力な台風が関東地方を直撃し、暴風雨が吹き荒れる深夜、東京都江東区のマンションが突然、武装グループに襲撃される。同時刻、都内各所で爆発事件が起こる。襲撃部隊と警察の銃撃戦が起きるが、日本が誇る特殊警察部隊SATは一瞬の内に壊滅、千葉から応援部隊を派遣しようとした自衛隊輸送用ヘリコプター7機が全て撃墜され、警察、自衛隊双方に多数の犠牲者が出る。そして政府各官庁のHPは何者かに乗っ取られ「明日朝までに東京を殲滅する」という予告が出される。

 敵の正体は?背景は?規模は?狙いは?どうやって国内に潜入したのか?これらが全く分からないまま、国家安全保障会議が開かれるが、様々な国内法にがんじがらめに縛られた状態で、自衛隊の出動すら決められない。まして米軍に出動要請など、もし米軍の放った銃弾で一般市民が犠牲になったら、と考えるととてもできない。

 そんな中、自衛隊の情報分析官である真下俊彦は、相手が北朝鮮の特殊部隊であり、核爆弾を持ち込んでいる可能性があることを突き止める。残された時間は数時間。「明朝、東京が核攻撃を受ける」危機を回避するために、敵を追い、拠点に迫る。

<感想>

タイトルである「ゼロの迎撃」のゼロとは、国内で起こる敵国の武装攻撃に対して、迎え撃つ日本側には何ひとつ準備ができていないことを言っているのではないか、と思います。日本の防衛は、水際で敵を迎え撃つことを想定しているので、外からの攻撃に対しては備えがあるものの、国内で起こる攻撃に対しては全く無力であり、様々なシビリアンコントロールで身動きできないこと、決断に時間がかかることを敵は見抜いており、日本のその弱点を突いてきます。

自衛隊の出動を決断した時の梶塚首相のスピーチは感動的です。

この小説のような設定が荒唐無稽なこととは思えず、あり得ない話ではないと思います。そのような場合の備えが、法的な整備も含めて全然できていない。作者はこのような日本の防衛面での大問題を提起しているのだと思います。

そのような難しい問題はともかく、ストーリーは展開がスリリングで手に汗握り、久しぶりに夜更かしをしてしまいました。私の中では今年のベスト作品です。年末の「このミステリーがすごい」での上位ランクインや、次回の本屋大賞などいくつかのポピュラーな文芸賞にノミネートされることになるのでは、と予想します。

映画化されるとしたら、首相は北大路欣也しかいない。主人公の真下は・・・ウーン、また岡田准一という訳にもいかないし、竹ノ内豊くらいかな・・・などと想像して読むのも楽しいものです。

(M.T@総務部)

私の読書日記23

2014年11月6日 木曜日

スケープゴート

幸田真音

t20141106以前のブログ(2013年12月4日)でも紹介した幸田真音の最新作です。幸田真音はビジネス小説、特に金融や財政を題材にした小説を得意としています。本作も氏の得意な分野で、主人公が女性、それも金融、財政を専門としている大学教授です。

(あらすじ)
 三崎皓子(みさきこうこ)は51歳。大学卒業後、米国の証券会社を皮切りにいくつかのシンクタンクや金融関係の会社を渡り歩き、今は日本の某大学の教授に落ち着いている。TVなどで日本の金融財政政策について度々発言し、ルックスも良く、お茶の間の人気も出てきている。
 
 そこへ目をつけたのが、政権を奪い返した与党の山城総裁。新政権の目玉として民間から閣僚を登用することにし、皓子に白羽の矢が立った。いきなり閣僚、しかも金融担当大臣という重要な役割を負わされた皓子であったが、新政権の人気取りに利用されるだけのお飾りではなかった。就任初日から地方銀行の取り付け騒ぎという危機に見舞われたが、これを機敏に対処し切り抜けると、自身のこれまでの経験や人脈を生かし、次々と難題をクリア。実力閣僚として評価されるようになる。

 民間からの登用であり、議員ではない立場であったが、次の参議院選挙では立候補を要請される。家庭では娘との確執があるなど問題を抱えていて、当初、議員だけはならないという約束で引き受けた閣僚であったが、その意向を無視して話は進み、立候補が発表される。

 そして、選挙には当選するが、その後には更に衝撃的な運命が待ち受けていた・・・

(感想)
 先頃、女性閣僚二人の同日辞任をいうニュースがありました。それを連想させますが、この主人公の違いは、自身の明確な政策があり、それを実現させるための情熱や経験、人脈があることです。多くの政治家たちが、自分の次の選挙に有利になる政策しか関心がない中で、主人公が真に日本の将来を考えて政策を訴える姿は、今の政治家もこうでなければ、と考えさせられることばかりです。

 タイトルから想像すると、結局最後には閣僚辞任で終わるはず、と思いながら読み進めましたが、意外にもそうはなりません。連載の途中でストーリーを変えたのかな、想像してしまいました。

(M.T@総務部)

私の読書日記22

2014年10月2日 木曜日

修羅走る関ヶ原

山本兼一

t20141004多くの作家が題材にしてきて、今更「関ヶ原」について書くことがあるのかな、と思って手に取ってみましたが、これがなかなか面白い。章立てがユニークで、各章タイトルは全て武将の名。各章ごとにその武将があの日、あの時、どんな心理状態だったのか、何を考えて戦ったのか、を克明に描写し、それでいて章を進めながら時間の経過と戦況の変化に矛盾なく関ヶ原の激闘が展開される。見事な構成力です。

(あらすじ)

 慶長5年(1600年)9月15日、関ヶ原に陣を敷いた西軍8万4千、東軍8万の大軍勢。西軍の大将格、石田三成は前夜の大垣城での軍議で出た家康陣地への夜襲案を退け、あくまでも正面から正々堂々と家康を成敗することが重要だと正論を押し通して関ヶ原に布陣。自身の正当性にいささかの迷いもなく、清々しく戦いの朝を迎えた。

 一方の東軍を率いる徳川家康は、今日まで、敵方の武将に対しあの手この手で調略の手を延ばし、用意周到に駒を進めてきた。できることは全て手を尽くし、準備万端、負けることは絶対にないところまでやりきったはずなのだが、戦いを前にしてまだ不安であった。寝返りを約束した小早川は本当に西軍を攻撃するのか。戦いに参加しないことになっている毛利は本当に約束を守るのか。

 各武将も様々な思いでこの地にいた。三成との友情ゆえ参戦した大谷吉継はこの地を死に場所と決めている。その三成憎しで家康に従った福島正則は、家康が戦いに勝った後、豊臣家をどう処遇するのか、不安でならない。

 小早川秀秋は三成、家康双方から誘いをかけられ、双方に義理がありどちらについて良いかわからない。臣下にも両論あり苦悶している。毛利秀元も父輝元が西軍の総大将に祭り上げられてはいるが大阪城に残ったまま。家臣団は分裂し、この地においてもまだ陣内で激論が戦わされている。

 この他、宇喜多秀家織田有楽斎島左近加藤清正竹中重門(竹中半兵衛の子)、黒田長政吉川広家らの様々な思いが描写される。

戦いを前に、石田三成から密命を帯びた土肥市太郎市次郎の兄弟(この二人はおそらくこの小説の創作上の人物)。兄は小早川の裏切りを防止すること、弟は毛利を参戦させることが使命である。市太郎が戦場を迂回しながら小早川の陣内にたどり着いた時、既に戦端は開かれていたが秀秋は動こうとしない。家臣には、西軍を裏切ることは義に反すると説く武将松野主馬もいたが、大勢は裏切りに決していた。

一方、弟市次郎は毛利陣に入り参戦を迫るが、安国寺恵瓊以外全て家康に取り込まれており、万時休す。やむなく、二人が取った行動は・・・・。

(感想)

天下分け目と言われた関ヶ原の戦場は岐阜県内。現地へ行けば各陣地跡がしっかりと遺されており、古戦場巡りがウォーキングコースにもなっています。特に三成が布陣した笹尾山は関ヶ原全体が一望でき、当時の戦闘がどんな風に展開されたかを俯瞰できます。

数年前、私もコースに沿って歩いてみました。印象深かったのは大谷吉継の墓です。関ヶ原の戦場からはかなり山の中に入っていますが、近習だった湯浅五助が吉継を介錯後、首が敵に見つからぬよう、山深く入り埋めたとのことです。

三成と吉継の友情は有名です。欲得で動く戦国時代にしては珍しく、自らの損得よりも三成への友情を選んだ武将です。

この小説にも、吉継は死を前にして三成の使い番である市太郎に東軍の福島正則への手紙を託す場面があります。三成も吉継も、そして福島正則も豊臣家の将来を思う気持ちは同じだったのです。

作者山本兼一はこの作品を遺作として、今年2月に亡くなりました。おそらくは自らの死を意識しながらこの作品を書いたのだろうと思います。各武将の死に様を描きながら、自分の死に方を考えたのであろうと思われ、胸に迫るものがあります。

(M.T@総務部)

私の読書日記21

2014年8月19日 火曜日

銀翼のイカロス

池井戸潤

 t20140819昨年TVドラマで驚異的な視聴率をたたき出した「半沢直樹」の最新作です。
2012年12月12日付のブログで紹介した頃は、このようなブームが来るとは思いもよらなかったので、今の状況には大変驚いています。その時紹介した本は三冊ですが、

 「七つの会議」     NHKでドラマ化(2013年7月)

 「ルーズベルトゲーム」 TBS系でドラマ化(2014年4月)

 「ロスジェネの逆襲」 「半沢直樹」の続編としてドラマ化計画あり???

 この他にも、今年日本TV系列で放送された「花咲舞が黙ってない」も同氏の原作です。(原作タイトルは「不祥事」と「銀行総務指令」)
このように売れまくっている池井戸氏が出した「半沢」の最新作ですから出版前から期待していました。

(あらすじ)

 証券子会社への出向から銀行本体に戻った半沢に待ち受けていた仕事は、経営悪化した「帝国航空」の経営改再建策を練り、再生させること。
 さっそく厳しいリストラを含んだ再建策を帝国航空側に納得させるが、そこで降って湧いたのが政権交代。新政権は帝国航空再建のためと称して国土交通大臣の私的諮問機関「タスクフォース」を立ち上げ、半沢らがつくった再建策を全否定し、新しい再建案を提示した。その骨子は銀行の債権放棄。半沢の銀行は500億円もの債権を放棄せよ、と迫られる。自主再建が可能なのになぜ、債権放棄を押し付けるのか。そこには、タスクフォースを牛耳る弁護士乃原の野心、新大臣の点数稼ぎ、新政権の国民向けパフォーマンスがあった。納得できない半沢だが、銀行も大勢に押され、債権放棄に傾きつつあった。
 その劣勢を挽回するため、再び半沢は戦いを挑む。今回の相手は、数々の企業再生を手がけた弁護士乃原、銀行内部で乃原に内通する紀本常務、裏で暗躍する大物政治家。調査を進める中、半沢は15年前の地方飛行場建設地をめぐる政治家への不可解な銀行融資を発見する。
タスクフォース側から債権放棄決断の期限を切られ、ギリギリで出した銀行の決断は。。。

(感想)

 今回の作品もワクワクドキドキの連続で、一気に読ませます。一度は屈服する半沢ですが、きっちり「倍返し」してくれます。登場人物もおなじみのメンバーに加え、敵役の乃原は強烈なキャラクターが立っています。銀行内の新たな敵、紀本常務とその子分たちとの対決も見ものです。そして、なぜか金融庁のあの黒崎検査官も再登場します。政治家への多額の融資はなぜ行われ、何に使われたのか。ストーリーはミステリータッチで進みます。最後は池井戸氏らしく「銀行の使命とは何なのか」を真摯に問うエンディングです。
 テーマが具体的で面白いのですが、リアル過ぎてドラマ化できないのでは、と心配したくなる内容でした。

(M.T@総務部)